なぜ相続発生前の準備が必要なのか

相続の話し合いでは、「うちは財産が少ないから揉めないだろう」と思っていても、不動産など1円単位で分けにくい財産があることで、家族間の関係が悪化する「争族(そうぞく)」になるケースが後を絶ちません。

また、親が認知症になってしまい意思表示ができなくなると、預金が引き出せなくなったり、不動産が売れなくなったりする「資産凍結」というリスクもあります。そのため、本人が元気で正しい判断ができる相続発生前に、適切な準備(生前対策)をしておくことが、ご自身の大切な資産とご家族の絆を守るための最善の方法なのです。

目的別でわかる生前対策の全体像

ひとくちに生前対策と言っても、その方法は様々です。ご自身の状況や希望に合わせて、以下の「3つの柱」から考えることが重要です。

  • 紛争防止|家族が遺産の分け方で揉めないようにする
  • 財産管理|認知症などで判断能力が落ちたときに備える
  • 納税・節税|将来かかる相続税の負担を減らす

それぞれの目的に応じた生前対策のやることリストを見ていきましょう。

トラブルを防ぐ準備(紛争防止)

残されたご家族が遺産分割で揉めないための準備です。

  • 遺言書(ゆいごんしょ)の作成|誰に、どの財産を、どれくらい渡すのかを法的に定めておく書類です。特にお子様がいらっしゃらないご夫婦の場合、遺言書がないと配偶者と兄弟姉妹との間で話し合いが必要になり、トラブルに発展しやすいため作成を強くおすすめします。確実性を高めるには、公証役場という公的な機関で専門家と一緒に作る「公正証書遺言」が安心です。
  • 財産目録(リスト)の作成|どこにどれくらいの預貯金や不動産、あるいは借金があるのかをリスト化しておきましょう。法的な効力はありませんが、残されたご家族の財産調査の負担を大幅に減らすことができます。
  • 生命保険の活用|生命保険の死亡保険金は、原則として「受取人固有の財産」となるため、遺産の分け合いの対象から外れます。特定の家族に確実に現金を残したい場合に有効な手段です。

認知症による資産凍結を防ぐ生前対策(財産管理)

万が一、ご自身の判断能力が落ちてしまったときに備える対策です。

  • 家族信託(かぞくしんたく)の検討|自分が元気なうちに、信頼できる家族(子どもなど)に財産の管理を任せる仕組みです。遺言書が「死後の行き先」を決めるものであるのに対し、家族信託は「生前の管理」も任せられるのが大きな違いです。親が認知症になった後でも、家族の判断で実家を売却して介護費用に充てるといった柔軟な対応が可能になります。
  • 任意後見(にんいこうけん)契約|将来判断能力が低下したときに備え、あらかじめ自分の代わりに契約の手続きや財産管理をしてくれる人(任意後見人)を決めておく制度です。

税負担を軽くする生前対策(納税・節税)

将来の相続税の負担を抑え、早めに財産を引き継ぐための対策です。

  • 暦年贈与(れきねんぞうよ)|1年間(1月1日〜12月31日)に1人あたり110万円までの贈与であれば、税金(贈与税)がかからない仕組みを利用した制度です。長い時間をかけて少しずつ財産を移すことで、将来の相続財産を減らす効果があります。
  • 相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)制度の活用|累計2,500万円までの贈与が非課税となる制度で、将来値上がりが期待できる不動産や自社の株式などを早めに次世代へ移したい場合に向いています。

当事務所の解決事例

弁護士法人いかり法律事務所では、単なる法的な手続きだけでなく、お客様の「想い」に寄り添い、法的な「実利」と感情的な「納得感」の両立を目指す「納得の決着」を大切にしています。当事務所でサポートした生前対策の事例をご紹介します。

長女に自宅を確実に遺すための遺言書作成

配偶者に先立たれた90代の男性から、「ずっと面倒を見てくれている長女にご自宅などの財産を残したい」とのご相談を受けました。当初はご自身で書く「自筆証書遺言」をご希望でしたが、弁護士の調査により、未登記(法務局に登録されていない)の建物があることが判明しました。将来のトラブルを防ぐためにより確実な「公正証書遺言」をご提案し、弁護士が文案を作成して公証役場での立会いまでサポートすることで、無事にご本人の希望通りの遺言を完成させることができました。

将来の財産管理に備えた任意後見契約の締結

将来の生活や財産管理に不安を抱えていた70代のご兄弟のケースです。現在は判断能力が十分にある状態だったため、元気なうちから財産管理を任せられる「委任契約」と、将来判断能力が落ちた際に効力を持つ「任意後見契約」を同時に公正証書で締結しました。これにより、もしもの時にも確実にご親族が財産を管理できる法的な備えが完了しました。

まとめ

相続発生前における適切な準備と生前対策の実行は、大切なご家族が将来の揉め事や複雑な手続きで苦労しないための「最高の贈り物」です。

「自分にはどんな生前対策が必要か分からない」「家族を揉めさせないために、今できることを知りたい」

福岡で相続の生前対策をご検討中の方は、弁護士法人いかり法律事務所へお気軽にご相談ください。当事務所では、提携する税理士や司法書士といった専門家と連携し、窓口一つで「ワンストップ」の総合的なサポートを提供しております。まずは初回60分の無料相談をご利用いただき、あなたとご家族の未来の安心を守るための第一歩を踏み出してみませんか。私たちが全力で伴走いたします。

よくあるご質問

生前対策はなぜ必要ですか?うちの家族は仲が良いので揉めないと思うのですが。
普段は仲が良いご家族であっても、不動産など1円単位で分けにくい財産があることで、いざという時に遺産分割で揉める「争族」になるケースが少なくありません。また、ご自身が認知症になった際、預金が引き出せなくなったり不動産が売れなくなったりする「資産凍結」を防ぐためにも、判断能力がしっかりしている元気なうちからの準備が不可欠です。
生前対策にはどんな種類がありますか?何から始めればいいですか?
生前対策は大きく分けて、「紛争防止(家族が揉めないようにする)」「財産管理(認知症による資産凍結に備える)」「納税・節税(将来の相続税の負担を減らす)」の3つの目的があります。何から手をつけていいか分からない場合は、まずご自身の預貯金や不動産、借金などをリスト化した「財産目録」を作成し、現状を把握することから始めるのがおすすめです。
家族が遺産分割で揉めないようにするためには、どのような対策が有効ですか?
最も有効なのは、誰にどの財産をどれくらい渡すかを法的に定めておく「遺言書」の作成です。形式の不備などで無効になるリスクを防ぐため、公証役場で作成する確実性の高い「公正証書遺言」をおすすめします。また、遺産の分け合いの対象外となる「生命保険」を活用し、特定の家族に確実に現金を残す方法も紛争防止に役立ちます。
親が認知症になった後の「資産凍結」を防ぐにはどうすればいいですか?
元気なうちに信頼できる家族に財産管理を任せる「家族信託」や、将来ご自身の判断能力が落ちたときに備えて財産管理等をしてくれる人をあらかじめ決めておく「任意後見制度」の活用が有効です。遺言書は亡くなった後にしか効力が発生しませんが、これらの制度を利用することで生前の柔軟な財産管理が可能になります。
相続税の負担を少しでも減らしたいです。今からできる節税対策はありますか?
年間110万円までの贈与であれば非課税となる「暦年贈与」を利用して少しずつ財産を移す方法や、累計2,500万円まで非課税で贈与できる「相続時精算課税制度」を活用し、将来値上がりが期待できる資産を早めに次世代へ移す方法などがあります。これらを組み合わせることで、将来の相続財産を減らし、税負担を軽くする効果が期待できます。