親の介護で主張できる「寄与分」とは

寄与分(きよぶん)とは、亡くなった方(被相続人)の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人に対して、法定相続分(法律で定められた遺産の取り分の基準)にプラスして、遺産を多めに分ける制度です。

寄与分には、親の家業を無給で手伝った「家業従事型」や、親の借金を肩代わりした「金銭等出資型」などいくつかの種類がありますが、親の介護を献身的に行ったことに対する寄与分を「療養看護型」と呼びます。

「仕事をやめて親の介護につきっきりだった」「自分がおむつ交換から食事の世話まですべて行い、親の財産が介護施設費用などで減るのを防いだ」といった場合に、この寄与分を主張することができます。

寄与分が認められるケースと4つの条件

親を介護したからといって、無条件に寄与分が認められるわけではありません。民法では、夫婦や親子などの親族間には「互いに助け合う義務(扶養義務)」があると定められているため、通常の親族としての援助の範囲内と判断されると寄与分は認められません。

親族としての義務を超えた「特別の貢献」として寄与分が認められるケースには、主に以下の4つの厳しい条件をクリアする必要があります。

  • 介護の必要性(病気や認知症など)|親が健康なのに単に同居して身の回りの世話をしていただけでは認められません。「要介護度2以上」など、食事や排泄などで第三者の手助けが日常的に必要な状態であったか、または高度な認知症などで常に見守りが必要な状態であったことが求められます。
  • 無償性(報酬をもらっていない)|介護の対価として、親から十分な現金を受け取っていたり、親の財産から多額の生活費を払ってもらっていたりした場合は認められにくくなります。
  • 継続性(長期間の介護)|数週間や1〜2ヶ月といった短期間ではなく、一般的には1年以上の長期間にわたって継続的に介護を行っていたことが必要です。
  • 専従性(つきっきりでの介護)|働きながら休日に手伝う程度ではなく、仕事を辞めたり労働時間を大幅に減らしたりして、親の介護に多くの時間を費やしていた事実が重視されます。

寄与分の計算方法と必要な証拠

実際に介護による寄与分が認められるケースでは、どのように金額が計算されるのでしょうか。

一般的には、「もしプロの介護士(第三者)に依頼していたら、いくらかかっていたか」を基準に計算します。

裁量割合とは、プロの介護士と素人の親族との専門性の違いなどを考慮して、金額を割り引く(例えば0.7倍などにする)割合のことです。

寄与分を認めてもらうための客観的な「証拠」

これらの介護の実態を証明し、他の相続人に寄与分を認めさせるためには、「私がこれだけ頑張った」という口頭の主張だけでは不十分です。

  • 親の要介護認定の記録、医師の診断書やカルテ
  • 毎日の介護の様子を記録した介護日記や写真
  • おむつ代や通院の交通費などの領収書

これらのような客観的な証拠を提示することが極めて重要になります。

相続人以外の介護でも認められる「特別の寄与」とは

これまでの法律では、寄与分を主張できるのは「相続人(配偶者や子どもなど)」に限定されていました。そのため、「長男の妻」が義理の親の介護を長年献身的に行っても、長男の妻自身は相続人ではないため、遺産を1円も受け取れないという不公平な問題がありました。

この不公平を解消するため、2019年(令和元年)7月に改正民法が施行され、「特別の寄与」という新しい制度が創設されました。

これにより、相続人以外の親族(長男の妻など、6親等内の血族または3親等内の姻族)が、無償で療養看護等を行い、被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合、相続人に対して「特別寄与料」として金銭の支払いを請求できるようになりました。

寄与分のトラブルを「納得の決着」へ導く当事務所

「私が親の面倒を最後まで見たのだから、多くもらって当然だ」「いや、親と同居して家賃を浮かせていたじゃないか」——寄与分の問題は、兄弟間の長年の感情的な不満が爆発しやすく、最も話し合いが泥沼化(争族)しやすいポイントの一つです。

弁護士法人いかり法律事務所では、このような複雑な感情が絡む相続トラブルに対し、以下の強みで皆様をサポートいたします。

  • 法的な「実利」と感情の「納得感」の両立|私たちは、単に冷たい法律論を振りかざしたり、声の大きい人の意見だけが通るような場にはさせません。言えない人の気持ちもきちんと届け、法的な「実利」と感情的な「納得感」の両立を目指す「納得の決着」を大切にしています。
  • 客観的証拠に基づく冷静な交渉|寄与分が裁判所等で認められるハードルは高いのが現実です。だからこそ、ご依頼者様から当時の介護の状況を丁寧にヒアリングし、カルテや日記などの客観的証拠を徹底的に収集・整理した上で、相手方が納得せざるを得ない根拠を提示して交渉を行います。交渉はすべて弁護士が代理人として行うため、当事者同士の直接の接触による無用なストレスを回避できます。

まとめ

親の介護の苦労が寄与分として認められるケースは、法的な要件を満たし、かつ客観的な証拠によって証明できた場合に限られます。しかし、ご自身の献身的な努力が正当に評価されないまま、不公平な遺産分割を押し付けられて泣き寝入りする必要はありません。

「長年の介護の苦労を、少しでも遺産という形で報われるようにしたい」「兄弟が寄与分を全く認めてくれず、話し合いが進まない」

福岡で遺産分割や寄与分についてお悩みの方は、弁護士法人いかり法律事務所へお気軽にご相談ください。当事務所では初回60分の無料相談を実施しております。あなたの大切な想いを守り、前を向いて生きるための「納得の決着」に向けて、私たちが全力で伴走いたします。

よくあるご質問

親の介護を一人で担ってきましたが、相続の話し合いで遺産を多く分けてもらうことはできますか?
亡くなった親(被相続人)の財産の維持や増加に「特別の貢献」をしたと認められる場合、「寄与分(きよぶん)」として法定相続分にプラスして遺産を多めに受け取れる可能性があります。介護による寄与分は「療養看護型」と呼ばれます。例えば「自分がつきっきりで親の介護をしたため、高額な介護施設費用を支払わずに済み、親の財産が減るのを防いだ」という場合に主張できます。ただし、民法では親族間の「互いに助け合う義務(扶養義務)」が定められているため、単に「身の回りの世話をしていた」という程度では通常の義務の範囲内とみなされ、認められません。
介護による「寄与分」が認められるためには、どのような厳しい条件があるのですか?
通常の親族としての義務を超えた「特別の貢献」と判断されるために、主に以下の4つの条件をすべてクリアする必要があります。①介護の必要性:親が健康な状態ではなく、「要介護度2以上」や高度な認知症など、日常的な第三者の手助けや見守りが不可欠な病状であったこと。②無償性:介護の対価として、親から十分な報酬(小遣いや給与など)をもらっておらず、親の財産から多額の生活費を払ってもらっていなかったこと。③継続性:数週間や数ヶ月の短期間ではなく、一般的には1年以上の長期間にわたって継続して介護を行っていたこと。④専従性:仕事をしながら休日に手伝う程度ではなく、仕事を辞めたり労働時間を大幅に減らしたりして、親の介護に多くの時間を費やしていたこと。
介護の寄与分の金額はどのように計算されますか?また、認めてもらうために必要な証拠はありますか?
原則として「もしプロの介護士(第三者)に依頼していたら、いくらかかっていたか」を基準とし、客観的な証拠を用いて算出・証明します。計算式は【介護報酬相当額(1日あたりの金額)× 療養看護した日数 × 裁量割合】です。裁量割合(0.7倍など)とは、プロの介護士と素人の親族との専門性の差などを考慮して差し引く割合のことです。必要となる客観的証拠としては、親の要介護認定の記録・医師の診断書やカルテ、毎日の介護の状況を詳細に記録した介護日記や写真、おむつ代や介護用品・通院の交通費などの領収書が挙げられます。他の相続人に納得させる、あるいは裁判所に認めてもらうためには、口頭の主張だけでは不十分です。
相続人ではない「長男の妻」が義理の親の介護を献身的に行ってきた場合、遺産を受け取る権利はありますか?
2019年(令和元年)7月の改正民法施行により「特別の寄与」制度が創設され、相続人以外の親族であっても「特別寄与料」として金銭を請求できるようになりました。これまでは、相続人(配偶者や子どもなど)に該当しない「長男の妻」がどれだけ介護を頑張っても遺産を1円も受け取れず、不公平であることが問題視されていました。新制度により、無償で療養看護等を行い、被相続人の財産の維持・増加に貢献した一定の親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)は、相続人に対してその貢献度に応じた金銭を請求することが可能です。
介護を巡って兄弟間で意見が対立し、直接の話し合いが一切進みません。どう解決すればよいですか?
当事者間での合意が不可能な場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立て、第三者を交えた話し合いで解決を目指します。介護による感情的な不満や不信感は兄弟間の対立を激化させやすく、話し合いが泥沼化しがちです。調停では、調停委員を挟んで客観的な証拠をもとに適正な分割方法を協議します。調停でも合意に至らない場合は自動的に「審判」へ移行し、裁判官が提出された介護実績の証拠や法的な要件を厳格に精査した上で、最終的な遺産の分け方を決定(裁定)します。