なぜ遺産分割で兄弟が揉めるのか|4つの原因

「うちは財産が少ないから揉めないだろう」と思っていても、遺産分割の手続きでは、明確な基準がないまま長年の感情をぶつけ合ってしまい、兄弟間で激しい争いになることが多くあります。まずは、なぜ兄弟で揉めてしまうのか、その主な原因を知っておきましょう。

  • 不動産など分けにくい財産がある|現金や預貯金と違い、実家などの不動産は1円単位で物理的に分けることができません。「長男が実家に住み続けたいが、他の兄弟に払う代償金(現金)がない」といったケースで意見が対立しやすくなります。
  • 寄与分の主張|寄与分とは、親の介護や家業の手伝いなど、被相続人(亡くなった方)の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人に認められる、遺産の割り増し分のことです。「親の面倒を最後まで見たのは自分だから、遺産を多くもらう権利がある」と主張しても、他の兄弟が納得せずトラブルになるケースが多々あります。
  • 特別受益による不公平感|特別受益とは、特定の相続人が生前に住宅購入資金や結婚資金など多額の援助を受けていた場合、それを「遺産の前渡し」とみなして計算するルールのことです。この生前贈与の有無や金額をめぐって、「兄だけずるい」と不信感が募ることがあります。
  • 兄弟間の長年の感情的なしこり|遺産分割は、法律の問題であると同時に「感情の問題」でもあります。過去の生活援助の差や、親からの愛情の受け取り方の違いなど、目に見えない感情の対立が話し合いを阻害します。

こうした状況を放置すると、不動産の売却や預貯金の解約ができず「負の資産」として放置されたり、親の代の争いを自分たちの子ども世代へ引き継がせてしまったりする恐れがあります。そのため、適切な対策が不可欠です。

兄弟で揉める事態を防ぐ事前の対策

もし親御さんがご健在であれば、兄弟間のトラブルを未然に防ぐための「生前対策」が最も効果的です。

  • 遺言書の作成|「誰に・何を・どれだけ残すか」を明確にする法的な文書です。ご自身で書く自筆証書遺言は形式の不備で無効になるリスクがあるため、法律の専門家である公証人が作成する「公正証書遺言」の作成を強くお勧めします。
  • 生命保険の活用|死亡保険金は原則として受取人固有の財産となり、遺産分割協議の対象から外れます。特定の子どもに確実に現金を残したり、不動産を継ぐ子どもが他の兄弟に払う代償金の原資として準備しておくのに有効な対策です。
  • 財産目録の作成|親の財産の全容が分からないことが、疑心暗鬼を生む原因になります。生前に預貯金や不動産のリスト(財産目録)を作成しておくことで、死後の資産調査漏れを防ぐことができます。

すでに兄弟間で揉めている場合の対策

すでに相続が発生しており、兄弟間での話し合いがまとまらない場合は、以下の対策をとることが重要です。

  • 当事者同士での直接の接触を避ける|感情的になっている親族同士が直接話し合うと、無駄な暴言や対立を生み、解決がさらに遠のきます。
  • 弁護士を代理人として立てる|「弁護士を立てると関係が悪化するのでは」と心配される方もいますが、むしろ逆です。冷静な第三者である弁護士がすべての交渉窓口となることで、感情論を排し、「法的な決着」という大義名分のもとで関係を整理できます。客観的な証拠を集め、法に基づく公平な着地点を提示することが可能です。
  • 遺産分割調停の活用|当事者間での合意が不可能な場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員という第三者を交えて解決を目指します。弁護士に依頼すれば、複雑な調停手続きや家庭裁判所への出廷もサポートしてもらえます。

当事務所の解決事例

弁護士法人いかり法律事務所では、相続において「声の大きい人の意見だけが通るような場にはしない」ことを大切にしています。表に出ている主張だけでなく、言葉にならない感情も整理し、法的な「実利」と感情的な「納得」の両立を目指す「納得の決着」へ導きます。

兄弟間で協議ができなかった遺産分割を約3か月で解決

70代男性のご依頼者様のケースです。お母様が亡くなられ、ご兄弟お二人が相続人となりましたが、過去にお父様の遺産分割の際にも紛争となって裁判に発展していたため、今回も兄弟間で全く協議ができない状態でした。

そこで、当事務所の弁護士が代理人として介入し、お母様の遺産を正確に調査した上で、法定相続分に応じた遺産分割を希望する内容で「遺産分割調停」を申し立てました。結果として、調停申立てからわずか3か月という短期間で、ご依頼者様の希望通り法定相続分に応じた分割での和解が成立しました。

ご依頼者様からは、「1か月以上悩んでいたが、相談して良かった。今回の調停を何事もなかったかのように終えてもらえた」と感謝のお言葉をいただいております。

このように、長年の確執で揉めることが予想される兄弟間であっても、専門家が早期に介入して適切な対策を講じることで、迅速かつ公平な解決が可能です。

まとめ

遺産分割において兄弟で揉めることは、決して珍しいことではありません。しかし、その争いを当事者だけで解決しようとすると、時間と精神力を消耗し、関係を修復不可能にしてしまいます。適切な対策を取り、第三者である専門家を頼ることが解決への一番の近道です。

「相手の主張が理不尽で納得できない」「直接顔を合わせて話し合うのはもう限界だ」

福岡で遺産分割のトラブルにお悩みの方は、弁護士法人いかり法律事務所へお気軽にご相談ください。当事務所では初回60分の無料相談を実施しております。あなたに代わって複雑な感情と法的な問題を整理し、前を向いて生きるための「納得の決着」に向けて、私たちが全力で伴走いたします。

よくあるご質問

「うちは財産が少ないから揉めない」と思っていても、兄弟間で揉めてしまうのはなぜですか?
遺産分割の話し合いでは、明確な法的基準がないまま、家族間の長年の感情や不満がぶつかり合いやすいためです。特に揉めやすい原因は4つあります。①実家などの不動産は現金のように1円単位で切り分けることが難しく、誰が取得し他の兄弟にいくら支払うかで対立が起きる。②「親の介護を最後まで一人で背負ったから遺産を多くもらう権利がある」という寄与分の主張が納得を得られない。③特定の兄弟だけが生前に住宅購入資金や結婚資金などの多額の援助を受けていた場合に不信感が募る(特別受益)。④過去の親からの愛情や扱いの差など、目に見えない感情の対立が話し合いを阻害する。
遺産分割の話し合いがまとまらないまま放置すると、どのようなリスクがありますか?
不動産の売却や預金の解約手続きが進まないだけでなく、親の代の争いを子ども世代にまで引き継がせてしまう深刻なリスクがあります。実家が管理しきれない「負の資産」として放置され、維持費や固定資産税だけがかかり続ける事態に陥ります。また、話し合いを先送りにしている間に相続人である兄弟が亡くなると、次の相続が発生して権利者が数倍に膨れ上がり、全相続人と連絡が取れなくなって土地が売却も活用もできない「塩漬け」状態になる恐れがあります。
親が元気なうちに、兄弟間で揉めないように準備できること(生前対策)はありますか?
「遺言書の作成」「生命保険の活用」「財産目録の作成」の3つが非常に有効です。①公正証書遺言:誰に何をどれだけ残すかを明確にします。自筆証書遺言は形式不備で無効になるリスクがあるため、公証人が作成する公正証書遺言が最も確実です。②生命保険:死亡保険金は原則として「受取人固有の財産」となり遺産分割の対象外です。実家を継ぐ長男を受取人にしておけば、他の兄弟に支払う代償金の原資を確実に用意できます。③財産目録:預貯金や不動産の全容をリスト化して開示しておくことで、死後の財産隠しの疑いや家族間の疑心暗鬼を防げます。
すでに兄弟間で感情的になっており、直接話し合うのが難しい場合はどうすればよいですか?
当事者同士の直接の接触を一切避け、冷静な第三者である弁護士を代理人として立てるのが最善の対策です。感情的になっている親族同士が直接話し合うと、無駄な暴言や対立を生み、解決から遠のいてしまいます。弁護士がすべての交渉窓口となることで、感情論を排し、客観的な証拠を集めた上で「法的な決着」という大義名分のもとで冷静かつ公平な着地点を提示できます。どうしても合意に至らない場合は、家庭裁判所へ「遺産分割調停」を申し立て、調停委員を交えて解決を目指します。